ある依存症者の終わらせたい日記

人生の大事なことは覚せい剤が全部教えてくれた。HIV×ゲイ×依存症×前科⇒精神保健福祉士のライセンス失効⇒最近復権。君子豹変して絶対に幸せになる。

2018-01-01から1年間の記事一覧

ITさんへの手紙 その18

ハッピーバスデイトゥユー。お誕生日おめでとうございます。当日ジャストに届けることができないので、せめて当日に手紙をしたためます。 お元気ですか。こちらは雨です。景色にくっきりと無数の白い線を走らせる冷たい雨です。雨の日はなぜか作業がはかどり…

雇用主への手紙 その17

六月に入り廊下に扇風機が登場しました。巷でよく見る羽がオレンジ色をしたあのでかいやつです。ちょうど部屋の真正面にどんと置かれ起床から翌朝四時までほぼ終日回り続けています。けっこうな轟音です。風よりも音をまき散らしています。その轟音がピタッ…

親への手紙 その32

お元気でしょうか。13日に出すと前の手紙に書きましたが一週間前倒しです。いつも手紙と本をありがとうございます。その本の差し入れですがちょっと中断してもらえないでしょうか。仮釈の話が進んでいます。近々転房もあるようでそうなると私物は持ち込め…

MTさんへの手紙 その11

六月がスタートしました。青空です。まったくもっていい天気です。どんっと建つ屈強な塀の何倍も高い欅が刑務所をおおうようにわさわさ揺れています。まぶしすぎる空に燃える緑が目に痛い。 お元気ですか。手紙と本が届きました。ありがとうございます。おめ…

親への手紙 その32

元気ですか。今日は中庭は芝刈りだったので土と草の匂いが日中病舎中にただよっていました。今は日が暮れ雨が降って少し肌寒いです。先週から衣替えとなりランニングシャツのみで大丈夫になったんですが夜はさすがに舎房着をはおります。体調は問題なくフィ…

委員面接がやってきた

朝一、作業始まる前に独房が開錠される。何の用件かは後で説明するといわれ連行される。が、仮面のときと同じこの茨城なまりの刑務官だし、今から本面なんだってことはバレバレだ。待ちに待ったその日は今日だった。ブラボー!平衡感覚を奪うようなこの長い…

弁護士のH先生への手紙 その2

春も終わりかといって夏でもなく梅雨にはまだ早い。ただただ緑の逞しさが目にまばゆい季節です。二年前の5月の最終土曜日に逮捕されて、その翌々日の月曜に裁判所で先生と初めてお会いしてから今日で丸二年になります。目を細めて「あ~色々あったね」と懐…

ある日の診察②

定期診察のため病舎の他の四人ともに連行される。前回は1月末だったから約四か月ぶりだ。頭の中で質問事項を確認しながら待合室にてしばらく待機する。一般受刑者や病舎三階の人もいる。どうしてかわからないけどHIV患者はなんとなくわかる。 呼び出され…

親への手紙 その31

お元気でしょうか。ゴールデンウィークも終わりいつもの日常が始まりました。四日休んだだけなのに袋折りの作業で指がつりそうです。この一年で指の腹と掌が大分厚くなった気がします。手紙と本をいつもありがとうございます。それとIWさんへの贈り物も。…

仮面(カリメン)の男

運動中「687番」と呼び出される。「何かやったんじゃねーか」とのからかいに「いや心当たりないっす」と言いながら心の中はすわ分類面接かと色めき踊る。刑務官の「一名、分類連行します」との大声に「ビンゴ!ヨッシャ!!!」とこころの中だけではしゃ…

ITさんへの手紙 その17

隣のげっぷがひどい。隣の部屋のドラゴンタトゥーのオヤジが吐き出すげっぷがひどいんです。これは~なんっていうか...そう!まさにウシガエル。終日ドルビーサウンドで休日の静寂をおかしてきます。喉の奥の方に何匹か飼ってんじゃないか。花火大会のクライ…

MTさんへの手紙 その10

時が流れるのが遅すぎて吐きそうだ。ぐんぐん走るミジンコ型の雲だけが、世界は止まっていないことを教えてくれます。何があっても前向きにふるまおうとどこかの時点で決めてから、喜怒哀楽は常時「楽」に設定だったはずなのに、今日は祝日「哀」モード。イ…

雇用主への手紙 その16

ゴールデンウィークも折り返しに入りました。さわやかな風が吹き、けやきがざわめいています。塀の向こうのグラウンドでは今日は少年野球の練習試合のようです。連休はいかがお過ごしでしょうか。みどりの日。ここでは祝日祭といって祝祭日にはおやつが提供…

親への手紙 その30

お元気ですか。今日は二十八度の予報。掛布団と毛布一枚が回収され少しずつ夏仕様に変わっていきます。外の丸裸だった木々ももう梢や枝が見えなくなってしまうほど新緑が生い茂って季節の移り変わりを感じさせられます。本の差し入れありがとうございます。…

MTさんへの手紙 その9

四月の土曜。休日の朝特有の静けさの中、春の心地よい風が部屋通り抜けていきます。ここに来て風にあたる快感を知りました。お元気ですか。手紙を受け取ってくれてありがとう。返事をくれてありがとう。笑ってくれてありがとう。面白かったと伝えてくれてあ…

ITさんへの手紙 その16

週末から続く春の嵐に桜も力尽きその枝にもう花弁は残っていません。そしてこの風、この陽気、桜の花びらの代わりに花粉がひどい...らしい。ボクは白い粉にはあっけなくヘロヘロと腰くだける体質なんですが、こと花粉に関しては感受性ゼロです。花粉症のつら…

親への手紙 その29

お元気ですか?部屋の窓のすぐそばにある桜が咲いています。よぼよぼのうば桜ですがまあ桜には違いありません。咲きはじめは遅かったのに散り際のタイミングは周りと足並みをそろえ、昨日からの突風にあっけなく花弁を手放しました。今年の桜は早かった。こ…

雇用主への手紙 その15

先日は面会に来てくださりありがとうございました。三十分はあっという間です。言わなきゃいけなかったこと、聞いておきたかったことを後から気づいてしまい…やっぱり舞い上がってしまうんでしょうね。部屋に帰ってから何を話したか思い出そうとしてもメイン…

MTさんへの手紙 その8

今日で六日目の監禁。まあ刑務所なんでずっと監禁なんですが、先週のなごり雪のせいで屋外運動が中止になり、外へ一歩も出れていない監禁中の監禁が六日目という意味です。おかげで寝つきが悪い悪い。眺める三月。去りの空は明るく桜も。春二十パーセントく…

親への手紙 その28

お元気ですか。いつも手紙と本と今回はヨガのプリントもありがとうございます。 今日は矯正指導日。指導日は月二回(第二、第四金曜日)、作業ではなく教育活動が実施されます。単身者は部屋でラジオから流れる録音教材をきき、感想文を書いて提出します。今…

ITさんへの手紙 その15

春がちらちら見え隠れする陽気の中、腕まくりを注意され傷心。気をついているつもりはないんですがどうしてなんでしょう。ご機嫌いかがですが。お手紙ありがとうございます。京都いかれたんですか。雅ですね。研究発表ですか。アカデミックですね。送ってい…

MTさんへの手紙 その7

拝啓 本日昼食に「どんどろけ」とやらが提供されました。鳥取名物らしくMTさんを思い出しながら食べました。はたしてこれが正しいどんどろけかはわかりませんが、ゴーヤチャンプルのゴーヤぬきみたいでうまかったです。3月、年度末になると決算の都合でし…

親への手紙 その27

毎日少しずつですが、でも確実にあたたかくなっています。この手紙が着くころにはさらに春めいているんじゃないでしょうか。お元気ですか。昨日は3・11の黙とうがありました。ここ最近はそういえば地震がないなあと思いながら目を閉じていました。いつか…

ダルクへの手紙

先日はわざわざお手紙ありがとうございました。はじめましての状態ですし、何から書いていいのか戸惑っていますが、ここではミーティングにならって…アディクトの@@@@と申します。覚せい剤依存でHIVのゲイです。今は府中刑務所の病舎二階にて懲役中で…

親への手紙 その26

お元気ですか。去年の2月最終月曜日に八王子医療刑務所からこちらに移送となり、ちょうど一年です。特に変わり映えのない毎日です。ぐるっとみわたしても報告事項がない…。 変わりないということは幸せなことなのかもしれません。朝の目覚めがいい。朝食が…

雇用主への手紙 その14

こちらに来てもう一年が経ちます。駅の方にきれいなビルが完成して窓からの景色もすこし変わりました。早いものです。お変わりありませんか。こちらはというと…そうですね、最近「世界一伸びるストレッチ」という本を買って毎日実践していたらぐぐぐーーーっ…

MTさんへの手紙 その6

日曜の刑務所の空気はひどく澱んで重い。何をするにも億劫で読書も妄想もはかどらない。だけども手紙だったら書けそうな気がして候。 元気ですか。風邪などひいてませんか。さて何を書こうかともらった手紙を読み返してみました。職場で「もしかして若い子た…

親への手紙 その25

前略 連休最終日の夜です。いかがお過ごしですか。といっても直近の手紙は先週とどいたばかりでそうそう何か大事がおこるわけでもないでしょうが。こちらはといえば、これも特に報告することはない程度には元気にやっています。先日のドカ雪が枯れた芝生にわ…

OKさんへの手紙 その4

広い空にぽつんと雲一つ。おいてけぼりをくらい途方にくれてるように見えます。今日は建国記念日ということで祝日です。刑務所の祝日には特配のお菓子が支給されます。今回はMissKateのチョコレートウエハース(11枚)。箱をあけてホイル包みをや…

ITさんへの手紙 その14

先週の雪がまだ一面に残っています。巷ではもう雪は見あたらないんじゃないかなあ。塀の中の世界では、なんかちょっと様子がおかしくないかって思うことが少なくありません。空の青に雪の白のコントラストが鮮やかで思わず窓を開けたらおそろしく冷たい風が…