親への手紙 その２９

お元気ですか？
部屋の窓のすぐそばにある桜が咲いています。よぼよぼのうば桜ですがまあ桜には違いありません。咲きはじめは遅かったのに散り際のタイミングは周りと足並みをそろえ、昨日からの突風にあっけなく花弁を手放しました。今年の桜は早かった。この前雪が降ったと書いてたらもう桜も終わり、ここ何日かは作業中汗ばむほどです。この調子でゴールデンウィークまで一直線でしょう。

夜明けとともに目が覚めるここでの生活では日に日に早起きになっていきます。明日の日の出は５時２１分予報。今日よりもまた２分早い。
朝方が一番頭が冴えてるので近頃はふとんの中で読書しながら正気にピントをあわせます。その本の差し入れもありがとうございます。
探してもらっていてなかったやつは5月に自分で購入することにします。
Ｆへのお祝いもありがとうございます。
収容証明書を同封するのでまたよろしくお願いします。すみません。
何もお返しができないままありがとうとすみませんを繰り替えすばかり、申し訳ないです。いつまでも覚えておきます。

先月末にＩＷさん面会に来てくれました。仕事のこと通院先のことなんかを話していると面会時間の三十分はあっというまです。ＩＷさんは「そこそこの満足」「ほどほどの幸せ」といってくれますが、今の自分が「そこそこ」「ほどほど」を手に入れるためには精一杯努力しなければとも思います。
期待に応えようとするよりもまず恩返しの思いをわすれずにいたいです。
年度替わり、刑務官も異動やらで今の病舎は泥水をかきまぜたように落ち着きません。
まあしばらくすれば、お互いに癖もわかりおさまるところにおさまるんでしょう。

次回は４月２１日発信予定です。
今回の手紙はなんだか時がすぎるのが早い早いと連呼してしまいましたが、その早い時の流れに身をゆだねながらも何となく生きるんじゃなくて大事に過ごせればと思っています。二人とも体調に気を付けてください。