ある依存症者の終わらせたい日記

人生の大事なことは覚せい剤が全部教えてくれた。HIV×ゲイ×依存症×前科⇒精神保健福祉士のライセンス失効⇒最近復権。君子豹変して絶対に幸せになる。

委員面接がやってきた

朝一、作業始まる前に独房が開錠される。
何の用件かは後で説明するといわれ連行される。が、仮面のときと同じこの茨城なまりの刑務官だし、今から本面なんだってことはバレバレだ。待ちに待ったその日は今日だった。ブラボー!
平衡感覚を奪うようなこの長い長い廊下もウキウキした歩調になる。人間扱いされていないこを思い知らされる待機ボックスも今日は気にならない。

分類室にて仮面のときと同様に入退室の練習を行う。入口に立って、礼、頭を上げてから「入ります」といった後、パイプ椅子の横に立って、称呼番号、氏名を名乗る。刑務官の号令に従ってもう一度礼、「なおれ」の号令で顔を上げる。「どうぞ」といわれてから椅子に座る。退室時には最後に「帰ります」と言って立ち去る。筋書き通りにふるまうことの大切さ。これ大事。
予想通り今回の面接は委員面接、つまりは本面だと説明を受ける。刑務所としては仮釈放の対象者として関東地方更生保護委員会へボクを推薦しているが、決定権は委員会がもっているとのこと。今日はそのための調査であり、節度ある態度、丁寧な口調に気を付けるようにとくぎを刺される。もし仮釈不可となったら告知はなされるってちょっと縁起でもないこともいってくれる。
「在所証明書」「紹介状願」「出所時投薬延長願」の三つを願線請求しておくようにとの最後の説明をうけていざ面接へ。

前回とはまた違う女性の面接官。名乗ってくれるもいつも名前は覚えることができない。
面接の目的、仮釈放、一部猶予法、保護観察についての確認。これまで、そしてこれからの生活について訊かれる。
色々としでかしてしまった過去の話についてはいまさら取り繕うこともできないのですらすら話せるけど、これから未来側の話になると歯切れが悪くなてしまう。ポーズでももう少し前向き男子を演出できればいいんだが…。悩んで自信なさげにしてる姿を真摯でよく反省しているという風に受け取ってくれることを期待するが...。
覚せい剤とセックス、そしてパートナーとの関係についてこれからどうしていきたいのか問われて答えに窮す。一分くらい無言だったんじゃないかなあ。
薬物依存、ゲイ、HIV、前科…どれもがそれぞれ微妙にでもしっかり絡まり合っている。どれか一つだけを抜き出して語ることもできないし、どれか一つだけを隠して語ることもできない。うまく答えることのできない質問はありがたい。言葉にできないほど見たくない問題である場合が多いから。

委員面接くらいで気持ちを揺らさない。出所までこれまで通り変わらず同じように過ごす。そう決めていたのに、部屋を出ると、あたりを漂う空気が違ったように思える。刑務所からの圧がほんの少し弱くなったようで食いしばっていた歯もつい緩みそうになる。
後どのくらいここにいることになるんだろう。矯正指導日はあと何回?おしるこはあと何食?先が見えてしまうと時間が「過ごす」から「失う」に変わる。

部屋に戻りいつもの隣のゲップが聞こえた。これに対しては寛容になれないみたいだ。いつも通りムカつくぜ。

 

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関東地方更生保護委員会って埼玉にあるらしい。