ある依存症者の終わらせたい日記

人生の大事なことは覚せい剤が全部教えてくれた。HIV×ゲイ×依存症×前科⇒精神保健福祉士のライセンス失効⇒最近復権。君子豹変して絶対に幸せになる。

雇用主への手紙 その15

先日は面会に来てくださりありがとうございました。
三十分はあっという間です。言わなきゃいけなかったこと、聞いておきたかったことを後から気づいてしまい…やっぱり舞い上がってしまうんでしょうね。
部屋に帰ってから何を話したか思い出そうとしてもメインからズレた雑談ばかり浮かんでしまいます。収監されてから他者とコミットする機会がほとんどないので会話からのインプットに不具合があるようです。社会にもどったときにはこんな風にあれっ?となることも多いんでしょう。体力だってそう、一時的に体調が回復したからって以前と同じなわけではないんですよね。こういうのも「まずは体力をもどさなきゃ」と再三言われて「そうなのかなあ」と気づく程度です。人はコワレモノなんだからやさしく扱わなければということを肝に銘じつづけます。

さて面会でも先生が言っていた「そこそこの暮らし」「ほどほどの満足」について考えています。これまでは気の向くまま、誘われるがまま、わらしべ長者的人生だったわけですが、今回刑務所に入った時点でその本道から枝路へ逸れてしまいました。リセットなんてよく言いますがファミコンのように新しいキャラクターで元居た場所からやり直すなんてことは現実世界では不可能です。人は取り換えできませんし、人生はいつもいつも進み続けて止まれません。こっちの枝道を本道にして歩いていくこと。決してあのころの自分を目指さないこと。抽象的な言い回しになりますがこんな感じでやっていくしかないのかなあと。

最近は昔のことを思い出すことも減ってきました。未練がなくなったというよりは迷惑をかけたことも丸ごとわすれてしまいたいという意識が強いのかもしれません。出所後はまた同じ業界なので目をそらすことはできなくなります。事実は忘れずに、だけどこだわりすぎず、そんな生き方を探していきたいです。まあ、以前の自分がそんなに好きだったわけでもないんで、そこそこほどほど枝道でもなんくるなるんじゃないかと思っています。

面会から部屋に戻ると窓際のうば桜にぽこぽこ可愛い花が。去年は「おまえは桜だったんだ」的感動でしたが今年はただ「もう春か」とただの感慨に。
桜は心を狂わせます。漠然とした不安もぼんやり輝く希望に姿を変えるこの季節。遅咲きの狂い咲きなのかもしれませんが、次お会いできるときにはもう少し元気にそして普通に近づいておきたいです。
IWさんの関り(距離感というか、その温度感みたいなもの)を自分がこれから出会うであろう人とのつきあいに活かしていければと思っています。
いつもありがとうございます。
年度かわりあわただしいかと思いますが、お体に気を付けてください。

追伸 数えてみればもう差し入れ本を40冊も…そして41冊目のリクエストは「神のロジック、人間のマジック」を…。すみません。

 

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