池袋ラブ(ホテル)ストーリー
実は…実はという言葉で始まる打ち明け話にロクなものはない(つまらないということも含めて)ということはわかっているんだが、とりあえず「実は」ではじめてみる。
実は、彼氏ができるまで誰ともやらないと決めていたんだが、就職が決まったことを言い訳にヤリ目の相手と会ってしまった。人は…もといオレなんて脆いもんだ。
池袋のラブホテルで待ち合わせる。こんなチュエーションっていつ以来だろう。悪あがきだとはわかっていても軽く腕立てなんかしたりする。
部屋に入ってくる年下のウケリバ。「オレで大丈夫?」「はい。ボクの方こそ大丈夫ですか?」「全然大丈夫っ」…大丈夫のリフレイン。こういうやりとりは身体が覚えてるんだろう。するすると通過儀礼的段取りは進んでいく。先にシャワーを浴びる。相手の子がシャワーから出て来るのを待つ間、少しだけ灯りをしぼり、ベッドに座る。さすがに握りこぶしを膝の上においてコチコチになたりはしないが、適度な緊張はある。
身体を洗って頭をタオルで拭きながら出てきたその子は「あっ!ゴムはちゃんとつけてくださいね。」と確認してきた。自分としてはどっちでもよかったんで「あーあるよ」って答えると、彼は「実はあなたのこと知ってます。ブログ書いてません?HIVなんですよね。ちゃんとゴムしてくれないとね。こわいこわい」そう言った。「こわいこわいって福田和子かよ!」って突っ込みは心で止めておく。きっと知らない世代だ。
ボクのチ○コは有能なはずだった。いざというときに勃たないなんてことはこれまで一度もなかった。TPOをまもれるやつだと絶対的信頼をおいていた。ところが…勃起しない。うんともすんともいわない。傷ついたのか?驚いたのか?とにかく僕よりもチ○コの方がデリケートだったみたいだ。いつも大事な場面では体の方が正直で、体がボクに大切なことを教えてくれる。
上も下もそろって頭を下げたまま申し訳ないと平謝りでお開きにする。ボクのことを嫌いになっても、ボクのチ○コのことは嫌いにならないでくださいっ!って叫びたい気持ちだった。その子が帰ったあとボクはセンチメンタルに浸りながら、冷房をガンガンにきかせて、でっかいベッドに全裸になり大の字で横になる。今ごろになって勃起してきた。ボクはボクを慰めるようにマスターベンションをした。まさに自慰だ。ここまで生きてきてまだ体験したことのない場面に出会えた。
明日は晴れらしい。ラブホテルから出るときに浴びる朝日って好きなんだよなあ。そんなことを思いながらその夜はゆっくり眠れた。
ねっ、実は…ではじまる話ってやっぱりロクなもんじゃなかったでしょ?
スタイリッシュよりも場末の方が好きです。