ある依存症者の終わらせたい日記

人生の大事なことは覚せい剤が全部教えてくれた。HIV×ゲイ×依存症×前科⇒精神保健福祉士のライセンス失効⇒最近復権。君子豹変して絶対に幸せになる。

覚せい剤をやめるデメリットは?

今ボクは都下にあるとある精神病院に通っている。その病院で行われている物質使用障害治療プログラムへの参加するためだ。このプログラムの正式名称はSerigawa Methamphetamine Relapse Prevention Program。頭文字をとってSMARPP(スマープ)と呼ぶ(Aについては不明)。毎週一回、一時間半のグループセッションで全26回。一クール全て参加するとなると約半年かかる。ボクが参加しているグループは毎回十人程度のメンバーがいる。もう一つある曜日の違うグループだと参加人数は確実に二十人は超え、そこにスタッフの心理士や看護師、PSWなどが加わるため結構な大所帯だ。以前は両方通っていたが、コロナウイルスの影響で両方通っている人はどちらかを選んで欲しいというお達しが出たためワサワサしてない少人数の方をボクは選んだ。

 

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グループの導入時にまずインサート…ん?…クランクイン?…違う、アウトブレイク?なんかそういうやつ…チェックインだったっけなあ、まあそんな感じでまずは前回から今日までのそれぞれが課題として抱える薬物の使用状況を含めた近況を報告しあう。それが終わるとテーマについてテキストを読んだり、ワークしたり、そのワークについてそれぞれが考え思うことを発表したりする。その回のワークが全部終われば最後に感想を言ってクロージングするという流れだ。
どの回から参加するかはそれぞれのタイミングしだいってことになるんだが、ボクの参加しているグループでは前回最終セッションが終わったため今回から新クールとなった。第一回目の今回は「なぜ薬物をやめなくてはいけないの?」という原点回帰なテーマだった。こういう直球のテーマって正直苦手だ。ただワークなんかはけっこうさくさくできるし上手に答えれる質なんで苦ではない。例えば…
覚せい剤を使うメリットは?」
はい。セックスがすごくいいんです。しかもネタをもってたら王様気分を味わえるし。理想的な自分に変身できます。人生のすばらしさを知れました。
覚せい剤を使うデメリットは?」
はい。お金を根こそぎにつぎ込んでしまいます。それから彼氏ができない(できたとしても覚せい剤使ってても構わないなんて奴だとロクなもんじゃない気がする)。そしてやっぱり本命は捕まってしまうかもしれない。もうこれにつきます。(まあこの質問への模範解答は全部テキストに書いてあるんだが。)
覚せい剤をやめるメリットは?」
はい。普通の生活(彼氏も含む)が手に入る(かもしれない)。そしてやっぱり捕まんない(また来た)。
最後の設問「覚せい剤をやめるデメリットは?」
...うーーん。覚せい剤をやめるデメリットって…...覚せい剤を使えなくなる!間違ってはないよな...うん。でもこれじゃ禅問答だ。
失うことで得るものはあった。けどそうして得たものであっても元いた場所に戻ってしまうんならまた手放さなければならない。両方欲しいなあ。そう思ってしまうのはアディクトのかわいさだなあ。そんなことが頭をぐるぐる回りだし、珍しく混乱してうまくこたえられなかった。なさけない。
帰りの電車で考えた。覚せい剤をやめるデメリットってなんなんだ?今はとりあえず使ってないから今の自分が感じている生きづらさみたいなものを考えればいんだろう。これといって今の生活に大きな不平不満はないんだけれど、なんかこのままぼんやりとした人生がずっと続くのかなあって。強いて言えばこの生温かい絶望みたいなものがデメリットなんだろう。けどこれどう伝えればいんだろう。やったことない人には絶対にわかんないだろうなあ。
ボクの中にはすぐに死にたがる太宰はいないけどぼんやりとした不安を抱えた芥川はいるようだ。そんな風に思ったところでちょうど電車は高田馬場についた。

 

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たった四回だけど修了証。