いつもふられて楽になる
自慢ではないが、つきあっている相手とはキメセクを絶対にしなかった。したいとも思わなかった。クスリを使っていることすら隠し通していた(はずだと思う)。それがボクなりの愛情表現だった。ゆがんだ愛情表現だった。ゆがんだ愛情表現はいつか誰かを傷つける。裏目に出るってやつだ。
ある日突然、見ず知らずの弁護士からの連絡が入り、彼氏の「逮捕」「覚せい剤の使用」そして「他の男との浮気」を知ることになる。それってトラウマレベルの三重苦だ。心から申し訳ないと思う。
一度目の逮捕のときに付き合っていた相手は、裁判が終わり生活があらかた戻ったのを見届けてから、机にカギを置いて姿を消した。
二度目の逮捕のときに付き合っていた相手は、留置所へ面会に来て、泣いて怒って面会室のごみ箱を蹴飛ばして立ち去った。
どちらもまっとうな対応である。そのまっとうな人が泣いているのを前に自分は全く泣けなかった。職場の人たちが面会に来てくれた時には、彼女たちの涙を見るのが苦しくて泣かされたのに、付き合っている相手には泣けなかった。
恋愛というのがよくわかっていないんだと思う。相手がいなくなって残念で悲しいんだけど、どこか、いや確実にほっとしている自分がいて…。好きになれない、というか好きになってもらう覚悟を持つことができない。けっこう致命的な欠陥だと自覚はしている。自覚していてもどうすればいいのかわからない。
誰かが「許すことは忘れること、忘れることは生きること」っていってたっけ。ボクのこと忘れてくれてたらいいなあと願う。かわりにボクがあなたにしてしまった仕打ちをきっちり覚えておくから。幸せであってほしいなあと祈る。そして性懲りもないのだろうけどボクも誰かと幸せになろうと誓う。