ある依存症者の終わらせたい日記

人生の大事なことは覚せい剤が全部教えてくれた。HIV×ゲイ×依存症×前科⇒精神保健福祉士のライセンス失効⇒最近復権。君子豹変して絶対に幸せになる。

今年の十一月

去年の十一月。第三土曜日だった。

出所して一年半、やめていた覚醒剤に手を出した。

沢尻エリカがMDMAで逮捕されたというニュースが9モンのハウリングで流れているのを見たのがきっかけだった。ヤフコメはここぞとばかりに人間失格の烙印を押すコメントの嵐。もちろんイライラする。所詮世間の理解はこの程度のものだと自暴自棄になる。だったら使ってやれ…。そんな思考プロセスだった。いや……あのときはそう思っていたが、今にして思えば違うような気もする。もはやどうでもいい話だ。

いつも十一月だ。しばらくやめていても十一月になると再使用してしまう。ボクはきっと十一月を待っている。震えながら目を輝かせて十一月を待っている。

次の日は仕事だった。クスリの影響で集中しすぎて集中できない。かんたんな買い出しに数時間もかかってしまう。仕事にならなかった。職場はボクがアディクトであることを知っている。隠せない。隠してはいけない。隠さないほうがいい。使ってしまったことを打ち明けた。自分のことなのにうまく説明できない。泣けてくる。…泣いてしまった。何年ぶりの涙だったろう。頬をたどる熱さだけは今も思い出せる。体の中の毒が出ていくようだった。デトックスってこういうことかと感動した。その日はゆっくり眠れた。

次の日、仕事をクビを告げられた。職場はアディクションのことを知ってはいたようだが、理解はできていなかったみたいだ。涙は止まった。泣いてる場合じゃない。

親には相談できない。どうせキレるか泣くかで迫ってくるだけだ。

NAには相談できない。あそこに救急対応の機能はない。ってか誰の連絡先も知らない。

主治医には相談できない。診察は来週だ。

保護司にも保護会にも相談できない。どんな流れになるのかわからない。

観察所には...ありえない。バックに裁判所が見える。最悪の場合、再収監になる。(痛い怖いとこには手を出さない方がいい)。

頼るは我が身のみ。自分自身に相談してみた。

その筋に精通した専門家はどこにいる?プライベートは実に不充実だった当時のボクのスマホの連絡先は仕事関係の人だけだった(登録も20弱)。利害関係なく相談できそうな相手はひとりだけ。出所したときに入っていた保護会のソーシャルワーカーだ。彼女はもうその保護会を辞めていて法務省とのしがらみもなくフラットに助言してもらえそうだと思えた。

ボクの目は正しかった。彼女は有能だった。しかるべき相談機関を紹介し、家族、保護司、観察所とのやりとりについて適格なアドバイスをボクに与えた。プライベートで相談できる医者と弁護士を持っていたほうがいいと誰かが言っていたが、ソーシャルワーカーもこれに加えるべきだと思う。

覚せい剤の余韻も消えたころ十一月は終わっていた。

あれから一年。あの頃の自分の書いていたブログを読み返してみる。荒れてんなあ。一年が気持ちを凪らせた。今はおだやいでいる。時間薬が効いたんだろう。確かに恨んだけど、今は純粋に(いい意味でもい悪い意味でも)感謝しかない。感謝だけの場所になっている。

今年の十一月はどうだって?明日は離脱教育。保護会で尿検査。担当の先生にこのブログのこと話してみようと思っている。

 

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そして一年かけて友だち増加。増えることにいちいちプレッシャー感じなくなってきている(多分いい傾向)。