ある依存症者の終わらせたい日記

人生の大事なことは覚せい剤が全部教えてくれた。HIV×ゲイ×依存症×前科⇒精神保健福祉士のライセンス失効⇒最近復権。君子豹変して絶対に幸せになる。

雇用主への手紙 その8

拝啓 7月になったとたんに蒸し暑さが激しさを増した気がします。ここのところ毎日というか、二十四時間常にべたべた汗ばんでいます。ささやかな微風(空気の揺れ程度)を無意識に探しています。そちらの梅雨はどんなでしょうか。同じ都内でもこの塀の内と外とでは気候まで違っているような気がしてしまいます。ご機嫌いかがですか。
世間では小池旋風が吹き荒れてるようですね。特定の政党や宗教にこだわりはないんですが、知事選の時の公約に小池さんは前科者支援を上げていたので都民でもないのに期待していました。
年度末からこの時期にかけては通常業務に加えて、事業計画、事業予算、事業報告、決算、それに各種学会、役員会、理事会…と殺されそうな日々かと思います。夏休みまでには少し落ち着くのでしょうか。
さらに報酬改定の検討チーム。女性を求めてのアドバイザー就任ってのもあるんですね。もちろん口ではってことなんでしょうが。僕も新卒で病院に就職したときに、採用決定の決め手は「男だったから」ということを後になって教えてもらった記憶があります。PSWとしてまず身をもって学んだことは性差の重要性でした。
現場からはなれてまだ一年ちょっとですが報酬体系だのサービス体系だの遠い昔の思い出
話のようです。そしてもっとさらに遠い過去の出来事を思い返す毎日です。
福岡の病院をやめて沖縄に行かなかったら…。沖縄の地であのまま働いていたら…。どこかのタイミングで施設を去っていたら…。たらればなんて意味ないんですけどね。今はまだ偶然と必然の違いがよくわかりません。偶然なんてどこにもない気がするし、全部が偶然でなりたってる気もするし。その偶然のようななんだかんだがすべて連なって人生になって、いつか振り返って運命ってよんで説明づけたりするもんなんでしょうね。
思いもかけず夢にもみたこともなかった東京(刑務所だけど)。将来、ここにいたことに正しい意味付けができるような生き方ができたらなあと思います。
そういえば出所後の身元引受先が決まったんです。@@@という更生保護施設です。先日そこのPSWの面接をうけました。そして先週見事入所受け入れの返答が。いやー選んでもらうために受ける面接ってのは肩がこります。
将来の可能性や今後の目標をもうすでに手にして身につけているような誤解をあたえないよう、できるだけ客観的に現状をわかってもらいたく話していたら、なんだか意志のない他人事のような口ぶりになってしまって…非常に困りました。まあ相手の方が困ってたんでしょうけど。とにもかくにも一安心です。
ここでの収監ダイアリーノートも三冊目に突入しました。ノートのはじめに「ある男」という小説の一説を書き写しています。
「自分の居場所は早晩ここにはなくなるだろう。と男は思う。この地にそしられるだろうことも覚悟する。それでも一生涯会津のために働いていくのだ。けっして逃げず、けっして見捨てず。支えるのではなく、捧げていくことを、男は腹の奥で決める。いいな…すべては、これからなんだ」
調子にのりそうになったとき、(まあ大概いつもなんですが)、悩んでどうしようもなくなったとき(まあめったにないんですが)、戒めの言葉にしています。僕の犯した罪は裏切りです。結果、信頼を失いました。だからこれからは信頼を回復することを第一に考えなければと思っていました。だけどそうでないことに気づきました。疑われ続けても、信用されなくても頑張りつづけることが償いなんだと。
先生自身の多忙に加えてご家族も過渡期のようですね。ライフイベントにワークイベント。命を削られることなく吸い取る勢いで乗り越えていってください。
7月梅雨の夕立を横目に僕は今日も元気です。お体大切に。いつもありがとうございます。  敬具

 

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