ある依存症者の終わらせたい日記

人生の大事なことは覚せい剤が全部教えてくれた。HIV×ゲイ×依存症×前科⇒精神保健福祉士のライセンス失効⇒最近復権。君子豹変して絶対に幸せになる。

彼はどうだったんだろう(もしくは彼女は)

別に怒っているわけではない。どちらかといえば感謝しているんだ。

ことの発端はツイッターを介してのダイレクトメッセージだった。見知らぬアカウントからのそのメッセージをボクはSOSだと理解した。

ボクが収監生活についていろいろツイートしてたから、その手の話に詳しいと思ってDMしたんだって。
違法薬物で逮捕されて今、その検査の結果待ちなんだそうだ。
実際に使ってたから検査結果は確実にクロになるであろうとのこと。
執行猶予中の再犯のため最終的に収監は免れないらしい。
相談する人もいなく、死んだ方がいいなんて言ってる。

そんなこと言われてもなあ…。さてどうしたもんか。
そもそもツイッターで相談ってどうなん?あやしくないか?
けど内容がえらくリアルなんだよな…
確かにこの収監間際の生殺しの状況ってメンタルやられちゃうんだよね。そしてそれが嫌なくらいにわかりすぎる。
死にたいって、ようは生きたいってことなんだろう?
このままにしておいたら寝覚めが悪い。
メッセージのやり取りをしながら、逡巡しながら、自分になにができるか考えた。

たとえ収監されるとしても今ここで誰かとつながっていることは大事だ。
一般社会に対してのプラスのイメージを少しでももっているかどうかで収監ライフは全然違ったものになるはずだから。
どこにつなげればいいんだ?自助グループは軒並み閉鎖中だし、弁護士会館もコロナの影響でやってない。法テラスは…刑事事件やってくれんだっけ?
とりあえず自分の知ってる弁護士さんを紹介しよう。漠然とした不安が具体的な不安に変わるだけでも心のもちかたは違ってくる。

弁護士の先生はこころよく引き受けてくれた。

その弁護士の先生の事務所に一緒に行こうと待ち合わせたのは池袋駅
当日、何故かわくわくしながら待っていた。だけど、わくわくがわくわくを超えることはめったにない。その悩み人は待ち合わせの時間になっても現れなかった。
今日はどうもキャンセルになりそうだと弁護士の先生に電話で伝えた。ボクだけ行っても仕方ない。ボクが使ったわけでも捕まったわけでもないんだから。
弁護士の先生は「実はこういったことって少なくないんですよ。気になさらないでください」って実にさわやかな態度だった。

一時間待ってみたが、握りしめたスマホは震えなった。空はとても晴れていた。

その人が来なかった事実に対する、弁護士の先生のストーリーは、そんなに珍しくないよくある話で終わった。
ボクは…、ボクはずっとこういうことをしたかったんだと気づけた。誰かのSOSをだれかに、どこかにつないで少しでも未来をよいものにするための手助けをしかたったんだと。今回は自分だけのわくわくだったけど、次は誰かと一緒にそのわくわくを共有できたらいいなあなんて思えた。ボクのストーリーは「気づき」と名付けることができそうだ。気づかせてもらえてありがとうだ。
じゃあその彼(もしかしたら彼女)のストーリーはどんなだったんだろう。気になるところだ。今回は頓挫したが、いつかどこかでだれかとつながれる物語だったらいいなあと思っている。もちろんつながる先がボクとじゃなくたってかまわない。

本当のソーシャルワーカーってのは四六時中援助のための準備ができているもんだ。もう一度同じようなことがあっても僕は同じようなことをするんだろうな。きっと。ということは結局よかったことだということなんだ。

 

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こんな空の日に相談なんてしたくないよな。