狂った磁石
日暮里駅の11番線には池袋に向かう山手線の列車が入ってくる。なぜかわからないが自分の意識では右側に池袋は存在しているはずで、その方向から音をたてて姿を表す池袋行の緑の車両に毎回たじろいでしまう。方向感覚がぐらつくというか、今自分はどこにいんだっけってな感じになる。東京で生活をしているとこういう瞬間がたまにある。まあ何度も乗りこなすうちにそんなことはなくなってしまうんだけど。
自転車だったり車だったり、歩きでもそういうことはない。きっと自分の足だけで進む時間が長くなると少しずつ体内磁石が狂っていき、間違った方向感覚が出来上がってしまうのかもしれない。
人生という世界も似たようなもので、ずっとひとりで生きているとどっちがどっちかわかっていないことすらわからなくなってしまう。クスリを使うと尚更だ。ダルクやNAに通うのってそのズレを元に戻す役目があんのかなあって思う。繰り返し通いながら、人の中で自分の位置を確認しながら、少しずつ自分の生き方の方向感覚のズレを世間に合わせる。それからかな、進む方向を見定めるのは。