ある依存症者の終わらせたい日記

人生の大事なことは覚せい剤が全部教えてくれた。HIV×ゲイ×依存症×前科⇒精神保健福祉士のライセンス失効⇒最近復権。君子豹変して絶対に幸せになる。

ITさんへの手紙 その10

はりつめた夏がすこしゆるみはじめ、にじみだした残暑が疲れた気持ちと身体を蝕みます。ただ猛暑というわりには気合の抜けた曇天続きの毎日。暑さにうちわ一枚と我慢という武器のみで立ち向かわなければならない身の上としてはこのまま夏がフェイドアウトしないものかと期待しています。
お元気ですか。そちらも蒸し蒸ししてますか。傷痕はうずきませんか。河内村はどうでしたか。いい出会いはありましたか。数独してますか。いつも手紙と差し入れ本をありがとうございます。
本日2冊の本とポストカードが届きました。お盆休みの影響でいつもよりも検閲に時間がかかってしまっているようです。本来なら本の感想なりを書きたいところではありますが、あいにく発信日が明日なもので(明日をのがすとそちらに届くのが9月になってしまいます)、とりいそぎお礼まで。
さて、今年のPSW協会の全国大会は9月なんですね。大阪でしたっけ。MTさんとも会うようでボクを取り合う(押し付けあう?)愛人問題再燃ですね。以前いただいた手紙に著作権うんぬんとありましたが、手紙自体の所有権はITさんにあるのでMTさんへの開示についてはおまかせします。なんにせよよろしくお伝えください。
さてさて季節性のローということで、大きく調子を崩した季節や月がめぐってくると負の感覚を再体験するもんですね。ボクも一度目と二度目の逮捕が5月の最終土曜日だったので今年の5月27日は一日中新宿での職質のシーンがループして脳を支配していました。「あの時あの道をさけていれば」「あの時タクシーが止まってくれていれば」「あの時もっと地味目な服を着てあるいていたら」…たらればワールドに没入。「あの時クスリをつかっていなかったら」とはうかばないところが救われない感じですね。
きっと死ぬまで5月を迎えるたびに何回も何十回もこの不毛の渦にもきこまれるんだと思います。抗わず、諦めず向かえうつつもりです。
ITさんは最近眠れていますか。ボクはマイスリーを卒業し、今はHIVの薬を朝二錠にカマグ一袋です。とりあえずどんな熱帯夜でも熟眠です。そして明け方に夢を見ます。新旧おりおりの人たちが色とりどりの場所にありえないシチュエーションで待ち受けています。あんな人、こんな場所、まだ自分の中にいたんだと驚かされます。代り映えしない毎日だと夢はずっと昔の記憶からその材料をたぐりよせるものらしいです。重荷になりそうだと判断したら、人も場所もその都度切り捨てて、刹那的に生きてきました。そんなつもりでしたが、夢へのこの思い出のなだれ込み具合から、まあ長くも短くもない自分の歴史みたいなものが自分の中に存在していることを知れます。ITさんは最近いい夢をみていますか。
机に長く座っていると足元に熱がこもります。その熱めがけてやぶ蚊が中庭から一直線にやってきます。あえなく網戸に阻まれて跳ね返されて入れません。それでもくりかえし、くりかえし入ってこようと、何度でも何度でも…ドリカムかよ!出ていけない場所には入ってくることは出来ないんだよ。…早くでたいなあ。
「就寝時間になりました」と放送が流れました。準備しなければ。今夜はどんな夢が見れるでしょう。おやすみなさい。

 

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