ある依存症者の終わらせたい日記

人生の大事なことは覚せい剤が全部教えてくれた。HIV×ゲイ×依存症×前科⇒精神保健福祉士のライセンス失効⇒最近復権。君子豹変して絶対に幸せになる。

親への手紙 その14

拝啓 蝉が鳴いています。蝉がその身を声と化して叫んでいます。夏ですね。
お元気ですか。九州はひどい台風だったみたいですね。大丈夫だったでしょうか。まあ慣れてるでしょうしそんなに心配はしていませんが、まだまだ台風のシーズンは続くので気を付けてください。こちらは九州のような烈しい台風は来ませんがそのかわり揺れます。地震がしょっちゅうです。それと関東特有の蒸し暑さ。地面からわいてくるような熱気に脳みそがやられます。所内の一般工場では熱中症に倒れる人もいるようです。病舎は室内での座り仕事なので倒れることはありませんが、それでも暑さ対策でランニング一枚での作業で、スポーツドリンクが(あまり冷えてないのが一杯だけ)配給されます。
熱い季節の生まれなので、指先がかじかむ冬よりもべたついてでも暑い夏のほうが好きですね。ちなみにグーグーも他の猫と比べて夏は平気っぽいです。ベンガルのルーツは熱帯だからでしょう。
先月は父の日について何も書かずすみませんでした。母の日もですがなんと言葉にすればいいか戸惑ってしまいます。
市民税の支払いもすみません。確認しておきたいので通知書のコピーを送ってもらえませんか。
こちらでの生活は特に変わりありません。変わったことといえば封筒折の作業で指がどんどん分厚くなりつつあることくらいですかね。体調面もこれといって…。最近他のHIVの人たちの処方が変わって新薬になったらしいんですが、自分は処変ありません。診察がないのでよくわからないんですが、そのうち変わるんだと思います。今服用しているツルバダは骨にあまりよくないらしいんで、なるべく早めに変えてほしいんですがね。CD4は先月伝えたとおりです。自分のように感染時CD4が低かった人は上昇するのに時間がかかるらしいのでこちらも気長に待ちたいです。
そういえば弁護士のK先生とF先生が面会に来てくださいました。たった30分のために来てもらって申し訳ないんですが、たまに外の人と話をするのもいいもんです。
さて、ひとつめでたい報告があります。保護会の受け入れ先が決まりました。@@@というところです。基礎疾患もあるし何か所も断られるのを覚悟してたんですが、思いのほかあっさり決まってとりあえず一安心です。いちおうお礼のお手紙を書きました。(そちらから施設宛に贈り物なんかはしないでください。お願いします)。
ここでの生活していると昨日と今日、今日と明日がつながっているという実感が得られません。それは今でもずっとそうで「朝生まれて夜死ぬ」という風に一日はただの一日でしかない。今日は今日のためにある。もしくは懲役963日を消化するための数字でしかないと思ってしまいます。正しい過ごし方なのかどうかはわかりませんが、ここでの毎日を何年か先でどんな風に振り返るのか興味はあります。そんな余裕は少し出てきました。
遠くから祭囃子がきこえてきます。今年の夏は猛暑になりそうです。よい夏をお過ごしください。

 

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実家に引き取られ、すっかり年寄の家の猫になってしまった。ベンガルの野生はどこに。