ある依存症者の終わらせたい日記

人生の大事なことは覚せい剤が全部教えてくれた。HIV×ゲイ×依存症×前科⇒精神保健福祉士のライセンス失効⇒最近復権。君子豹変して絶対に幸せになる。

ITさんへの手紙 その2

ご機嫌いかがですか。
手紙と本の差し入れありがとうございます。
グレイトギャッツビー」よくわかんなかったですが、冬の独房でフィッツジェラルドを読んでいる自分ってどうよ的ナルシズムはとても気持ちよかったです。「ポーの話」は元旦までお預けしています。

今年は有名人の薬物事件での逮捕が続いて身につまされるばかりでした。僕は薬物の報道がどうも苦手なんですよね。パトカーの赤いライトやサイレン、警察官の怒鳴り声、通行人の視線やスマホのシャッターがフラッシュバックしてくるんです。いつのまにかその有名人が連行されていく姿に自分がすげかわり脳みそをループしはじめます。暗示にかかったようにふらふらっとまた使ってしまいそうになるのでリアルタイムでは見ないようにしていました。ここではテレビもネットも(肝心な薬物自体も)ないのでとりあえずは安心です。
一回目の逮捕では依存に対して全く無自覚でして、最近ですね、もしかしてずっと前から依存症だったんじゃないないだろうかと思うようになってきたのは。何年PSWやってたんだって話ですが。三度目。三度目は何事もうまくいくと相場は決まってます。

医療現場であってもITさんのように薬物依存に対して客観的にとらえる人って少ないですよね。同じようなことをホリエモンがツイートしてた記憶があります。トリップの世界にご興味あれば「ウルトラヘブン」って漫画がおすすめですよ。(カブは僕のヒーローです)

身体と精神にそれぞれ一つずつ慢性疾患をもち、三か月余りの病棟生活のかいあって、病人としてのアイデンティティも芽生え始めました。そんな中で気づいたこともあります。これまでは体にしろ、気持ちにしろ調子が悪いと安易に薬の効果に期待して、それに頼り、すぐにそれで改善される(できる)ものだと思い込んでいました。…人ってそんなに簡単なものではないんですね。HIVの薬を服用してウイルスは減ってCD4は上昇しても、白血球と肝機能の値は悪化する現実。行動と結果が一直線で結びついているのを無意識にあたりまえのものとみなしていたのは大きな間違えでした。
前の職場でも結果が出ないものはやってないか、やれてないかどちらかと決めつけて…いやはや。この価値観で職員に対峙してしまい職員を追い詰め…はしなかったですが、一方的にあきらめていました。懺悔です。人は時が過ぎてからやっと後悔や教訓をえるんですね。同時に忘れやすい生き物でもあります。「わからないものをわからないまま持っておける」そんな中腰に耐えうる胆力が欲しいものです。

晦日です。たった今、夕食についてきた緑のたぬきが年越しそばです。体にわるそー。体に悪いものはどうしてこんなに美味しいんでしょう。体に悪いものはどうしてこんなに心の底から人を元気にしてくれるんでしょう。
今夜は消灯が0時15分まで延長です。ラジオで紅白が流れています。ゆずが、見上げてごらん夜の星を~♪って歌ってるから窓をあけてみましたが、一階端のこの部屋からは経理棟とその向こうにある学校の体育倉庫みたいな霊安室しかみえません。この霊安室は毎年70人の利用があるらしい。そんなことを思いながら、生きてるんだから生きるしかないんだなあと。

今年もあと数時間。この一年、ハートを鍛えられました。ポキっと折れたままにならなかったのは、元来の鈍感さもあるのでしょうが、やっぱり人のおかげなんだと思います。
ITさんにも救われました。ITさんの手紙はまじめで一直線でどこか女の悲しみ(自虐?)がにじんでITさんの人柄がよく出ています。笑ってしまします。失笑ではありません。ジェットコースターを乗り終えて、上半身のホールドを上げながら思わずこぼれる笑みに近いものです。笑いは免疫を上げる効果があるのでITさんの手紙は一種の治療薬です。来年もよろしくお願いいたします。(笑)
今年一年ありがとうございました。よい新年をお迎えください。

 

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カブはボクのヒーローです