ある依存症者の終わらせたい日記

人生の大事なことは覚せい剤が全部教えてくれた。HIV×ゲイ×依存症×前科⇒精神保健福祉士のライセンス失効⇒最近復権。君子豹変して絶対に幸せになる。

雇用主への手紙 その3

お元気ですか。
こちらはあまり変化のない毎日ですが、自分なりのルーティンができつつかります。
朝起きて、午前中は読書、昼食後、安静時間はベッドに横になって読書、早めの夕食がすんだら、机に座って読書、そして消灯。シンプルです。本を読む男です。
仕事をしていたころはスケジュールにおわれて自由を欲しがっていたのに、いざ手に入ると(はたしてこの状況を自由な時間といえるかは疑問ですがw)持て余してしまいます。

そんな毎日で一番の楽しみは運動です。運動というよりも運動中の与太話の時間です。ほかの受刑者…なんと呼べばいいのか迷いますが、仲間と呼ぶと嫌がられそうですし、みんなというほど弾んだ空気は流れてませんし、同志というほど共有するものはないですし、メンバーだとアットホームすぎてなんだし、ムジナでは自虐だし…まあ他の受刑者ってのがしっくりきますかね。その彼らとの雑談タイムに救われています。大した話をしているわけででも、心を通わせているわけでもないですし、三十分という短い時間なんですが、この三十分があるかどうかで一日の過ぎ方が大きく違ってきます。こんな風に人との交流を感じる自分がいたことに素直に驚いています。
個人情報を極力さらさないように気を付けながら(結局ボロボロこぼれちゃうんですが)、共通の話題を探すとなるとおのずと薬物(依存)、HIV、ゲイネタが多くなってしまいます。この病棟で身体自立で運動に出てこれる人は、この三つがセットになっている人ばかりです。9人中7人がゲイという一般社会とは逆ですね。シュールですが面白いです、ぺちゃくちゃ話しています。
「CD8が8だった」「2になって運ばれた」「もう二回発症している」等の病気自慢から、「@区だと助成金が高い」「依存症の@@クリニックで出禁になった」とか実体験に基づく役立つ情報まで、刺激的です。
覚せい剤使用という直接的被害者のいない犯罪を犯した人が多いせいなのかもしれませんが、前向きというほどお気楽ではありませんが、思ったほど将来を悲観したり、打ちひしがれたままの人は少ないように思えます。
それでも(だからなのか?)、中には何度も出入りしてる人もいます。どうしてなんでしょうかね。
依存症の病理もあるでしょうが、やっぱり居場所の問題な気がします。
出所時、受刑者は(僕もきっとそうなるでしょうが)罪を償いきったとてもすっきりした気持ちで社会に出ていくのに対して、世間はそうはみない。怖い人、弱い人、ダメな人というレッテルでどこにも行き場がなくなり、苦労して疲れて再使用や再犯してしまうんじゃないかなあと、そんな気がします。
この点僕は受け入れ先があるという点ですごく恵まれているように思えます。ありがたいと思っています。

ここ八王子医療刑務所は、来年9月に昭島市に民間委託され新設されるらしいです。そこに自分も行くかどうかはわかりませんが、この年季のはいった医療刑務所の最後の冬をちゃんと見届けたいと思っています。
ますます寒くなってくるかと思います。お体に気を付けてください。

 

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ムジナは先が尖り気味