ある依存症者の終わらせたい日記

人生の大事なことは覚せい剤が全部教えてくれた。HIV×ゲイ×依存症×前科⇒精神保健福祉士のライセンス失効⇒最近復権。君子豹変して絶対に幸せになる。

親への手紙 その4

手紙と差し入れの本をありがとうございます。
今日はそうでもなかったですが、ここのところ冷え込みが激しいです。手袋を購入したんですが、月末に届くまではしばらくかじかむ指で筆記しています。まだまださらに寒くなっていくらしいです。
ただ、十度を下回るとスチームが朝夕稼働するらしく外気だけは下がってほしいと願っています。
来たばかりのころは外の景色で満足していたのに、今は向かいの部屋の太陽をうらやましく思っています。
年末に向けて町は華やいでいるんでしょうね。ここは誰もが制服なので季節感を感じる機会はあまりありません。出た時のお楽しみです。

治療の経過について報告します。
検査は先月以来あっていませんが、ウイルス量については説明を受けました。計算方式についても教わったんですが、はっきり理解できませんでした。とりあえず九万コピーというウイルスの数値がぐんと減ったようです。薬が効いているらしいです。熱や痛みもないまま自分の体がウイルスと戦っているのはなんだか不思議です。HIVの専門医がいうには普通のウイルス量とCD4の数値は反比例して経過していくものらしいんですが、ここではウイルス量が減ってもCD4は横這いの人が多いとのことでした。免疫は安静にしていれば上がるというものでもないらしいです。
診察では治療の効果が出ている雰囲気が伝わってきました。よくなっている態度を示されるだけでよくなった気になれます。

昭島の医療刑務所の情報ありがとうございます。またなにかあったら教えてください。
考えても仕方ないこととはわかっているんですが、つい今後のことについてよく考えてしまします。
一般刑務所に移送となった場合、仮釈がもらえるというメリットがあります。半面リスクがあります。これまでののんべんだらりとした生活から、いきなり作業労働のスケジュールに変わり、身体的にハードな環境になります。さらに他受刑者とのつきあいも病気やセクシャリティを隠しながらになるので(隠してもきっとどこかからもれて、バレるんでしょうが)精神的にストレスフルな状況が予想されます。そこで体調が悪化してもフォローがどんな感じでなされるのか不確かです。
そう考えると仮釈はなくても低空安定の数値のままここに居続けることもやぶさかでないのかもしれません。
でもやっぱり一日も早く出たいし…
移送について僕自身の意志は考慮されません。ただ治療に専念するだけです。
ここでいう治療に専念とは安静第一のことであり、これだけではCD4の上昇にはなかな結びつかずそのために努力する機会がなかなか得られません。もどかしいです。
まあ数値が芳しくなければ移送のデメリットを思い浮かべ、数値が良ければ移送されるのが本心だと思い込むというように自分を納得させる理由を見つけてやり過ごしたいです。

夜眠れないということはないんですが、覚せい剤が夢によくでてきます。最近はその夢の中で使用をためらうようになっています。そんな微々たる変化でしか回復を(これを回復をいっていいのか微妙ですが)実感できません。
ここにいる限り、いくらでもクリーンは声高に叫べます。それを成しえることが難しい話ではないようにも思えてしまします。実際は覚せい剤からの回復は自分ではわからず、刑務所の中では測ることはできないんですけどね。
どうもここではいろいろなことを頭だけで考えて分析的にとらえて結局袋小路に迷い込むとう具合になってしまいます。
そんな僕が言うのも何なんですが、二人ともゆっくりする時間をつくって悪い風にばかり考えないでいてもらえるとありがたいです。

実は昨日朝の時間帯に居室で腕立て伏せをしていて懲罰をうけました。懲罰処遇がどういうものかよくわからないんですが今のところ戸外運動などの集団プログラムが制限されています。色々言い分はあります。けれどいくつか気づけたこともあります。「服役中に懲罰を受けるということ」「ほかに懲罰を受けている人を見かけないこと」からも自分は少し他の人よりも自由に生きている感は否めません。自分の価値で行動に理由付けして、優先順位をきめて動いてしまうきらいがあります。周りとのすり合わせがいつも疎かなんです。これは自由ではなくて勝手とか無責任というんですよね。
色々学んでいます。学んだことを忘れずにいたいです。

手紙を書いていると時間があっという間に過ぎていきます。
二人とも体に気を付けて。
僕は元気です。

 

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