白昼夢
コロナ禍の象徴のひとつアクリルボード
原宿留置での苦い思い出がよぎる
あの日、面会室のドアを開けると部下が3人座って待っていた
アクリルボード越しに対峙したボクらは誰も何も話さない
話せない
一言でも言葉を発してしまったら自分がどうなるかわからなくて、世界ごとひっくり返ってしまいそうな気がして一ミリも動けなかった
わっと涙が出そうなのをぐっと堪らえようとしときにはもう遅かった
涙はこぼれ落ちていた
たった一滴だけで体重が何キロも減ってそうなそういう類の涙
悲しいのか、恥ずかしいのか、情けないのか、もう何がなんだかわからなくて
ただただ温かかった
温かくて熱い涙だった
その熱はこびりついてた余計なこころの澱を溶かしてくれた
あれ以来、ボクは涙もろい