ある依存症者の終わらせたい日記

人生の大事なことは覚せい剤が全部教えてくれた。HIV×ゲイ×依存症×前科⇒精神保健福祉士のライセンス失効⇒最近復権。君子豹変して絶対に幸せになる。

親への手紙 その6

お元気ですか。
二人とも僕以上に体に不具合が出ているようで心配です。
僕の体調は特に変わりありません。
CD4が二回連続で200を超えました。今月末の結果次第で移送が見えてきそうです。白血球と肝臓の数値は相変わらずですが、大きく心配するほどのものではないらしいです。白血球は体質的に少なめなのかもしれないらしく、肝機能についてはもう少し経過を観察しないと確定診断できないとの説明でした。ここの中では僕はかなり軽い患者でして、毎日の服薬に修行僧のような規則正し生活をしているので、急変することはないでしょう。

心配されているようにここは寒いです。寒いというより冷たいです。気温もそうですが、箸やちり紙や歯磨き粉のようなものまで丸ごと冷え切っています。すきま風もひどく、まるでキャンプです。これも罪と罰で耐えるしかありません。ベッドにもぐりこんで本を読みながら冬眠です。

ここでは、年末からクリスマスのチキンにケーキ、年越しそば、おせち、正月のもち、独り暮らしの時以上に正月らしく過ごせています。
三か月がたちました。なにをしているわけでもないんですが、ただ慣れるということにも時間が必要みたいです。最近やっと本を読んだり、人と話をしたりして笑ったり和んだりできるようになりました。

気になっていたマンションの借り手ですが、見つかったようでほっとしました。少しですが目の前が開けた気分です。共益費、税金、養育費、年金、保険でトントンになりそうですが、なんにせよよかったです。とりあえずひかえていたカイロ、厚手の靴下、ヒートテックの下着を次回購入しようと思います。

便箋の柄などいろいろ気をまわしてくれてありがとうございます。手紙の返事ですが、月末に出すようにします。月初めに制限分出してしまって、緊急で連絡したくてもできないといった事態は避けたいんで。次回は2月28日に送ります。
手紙は楽しみにして読んでいます。だけど読み返していません。同じことを何度も書かれてあるのでもういいよと思ってしまうからです。もう二度と覚せい剤には手を出さないと約束するので手紙には薬物の事をもう書かないでもらえませんか(有名人の報道やテレビ番組、@月@日あなたはどうだった等)。自分なりに今の環境でやれることをやってるつもりです。そこに「しっかり」「立ち直って」「打ち勝て」「気持ちを強く」って言われ続けると気がめいります。逮捕されてから一歩も前に進んでないような気分になってしまいます。HIVアディクションも完治のない慢性疾患です。こういう風にいうと病気に逃げてるといわれそうですが、一生ものの爆弾をもってしまったわけですから、爆発させて周りを悲しませることのないよう用心深く(見つからないとう意味ではなく、リスクを賢く避けるという意味です)生き抜きたいです。
安心できないでしょうが、安心してください。安心している姿をみせてください。随分勝手な言い草だとはわかっているんですが…、勘弁してください。

手がかじかんで字がいびつになってしまっています。スチームが入ってから書きます。

今日の夕食はカレーでした。土曜はだいたいカレーなんです。
17時を過ぎました。外は明るいです。毎日同じスケジュールで生活していると陽の光で季節の移り変わりを実感できます。あわただしく、次へ次へとステップを超えようとする生き方をしてきたのでこんな当たり前のことも久しく感じることがありませんでした。自分を見失っていました。転職転職でその時代時代の出会いや積み上げてきたものを切り離してきました。素直に目の前に与えられた役目に打ち込み、認めてもらい、居場所をつくるという道も用意されていたはずなのに。残りの時間を見据えて覚悟を付けれたらと思います。

ラジオから大歓声。白鵬が負けて、伊勢の里が優勝が決まったみたいです。(あと12場所で釈放が見えてきます。)
とにかくもう五か月目に入りました。先を考えると長く思えますが、過去を振り返るとあっという間です。
また来月手紙をだします。
体に気を付けてお過ごしください。僕のこの立場でいうのもなんですが、気に病まず二人の時間を大事にすごしてください。

 

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