誘われない何か
昨年末、ちょうど実家に帰省しようと新幹線のホームに向かう途中、知らない番号から着信が携帯に入る。
出てみたら刑務所で一緒だった友達からだった。
彼は最近、売人にキャリアアップしたと風の噂で聞いていたので、年末、かきいれ時だし「あっ!売り込みだな」とすぐにわかった。
刑務所にはたくさんのヤク中がいる。
真面目にやめようとするもの。
一切その気がないもの。
関わってくれるなと孤高で過ごすもの。
何となく派閥みたいなグループが出来上がる。
自分は旗色を鮮明にしないまま、ちょこちょこそれぞれに顔を出す蝙蝠タイプだった。
だからもちろん彼らの脈ありリストには入っているだろう。
営業電話のはずが「元気?」から始まって「誰々と連絡がつかない」とか「仕事休み?」とか特に他愛もない近況報告だけで終わってしまった。今の相場とか聞きたかったのに...拍子抜ける。
リハビリに通ってるとも、年末は実家で過ごすとも言わなかったのに、感じとる何かがあったんだろう。
カタギになりかけている健全な空気というかオーラみたいなものが醸しでていて、もしかしたら伝わったのかもしれない。
おんなじヤク中同士、止めようにもやめれない苦しみはわかってるはずで、だからこそやめようとしてるものを無理に引っ張り込むようなことはしない。
こういう思いやりサイコー!
自分で自覚できる回復って信用できない。
人の態度がどう変わるか、人がどう評価するのかが回復をはかるヒントなんだと思う。
少しは変われてるんだなあ。ボクの中の誘いがたい何かが生まれてきたのかもしれない。
年末にあったちょこっといい話。