ある依存症者の終わらせたい日記

人生の大事なことは覚せい剤が全部教えてくれた。HIV×ゲイ×依存症×前科⇒精神保健福祉士のライセンス失効⇒最近復権。君子豹変して絶対に幸せになる。

Rちゃんへの手紙 その2

拝啓 さえわたった空気。日に照らされひかる紅葉。その隙間から見える白い雲に青い空。言葉でうまく言えないんですがいい感じの日曜の朝です。

こういう閉鎖的空間に長くいると自分を守るためなのか幸福感受性が鍛えられどーってことのない刺激も「快」と受け止めることができるようになります。出所後もこの力を保ち続けることができれば平坦な日常も平和でいられることでしょう。

元気ですか。手紙に切手に本に、そして気持ちもありがとう。実は手紙と切手は届くんですがどうしてだか本は差し入れられません。一度どうなっているか聞いたんですが返事がないままもう一ヶ月。あまりしつこく聞くのも憚られるし...刑務官に話しかけるにがどうも苦手なんです。読んだ感想なり伝えたいんですが叶いません。なので本はしばらくいいよ。切手も大丈夫。ありがとう。

さて、新しい仕事は順調ですか。ボクは毎日封筒を折ったりミニクリップを組み立てたりの軽作業をこつこつちまちまやってます。楽しいと言ったら違うんですが絶望というにはなんとも生ぬるい雰囲気です。本来仕事ってのはこんな風に当たり前にあてがわれて生活に一部として眈々とこなしていく、それ以上それ以下のものでもないのかもしれないと思ったりなんかしています。働くことに生きがいを求めてのめり込んだり、挙句に過労死なんてどうかしてるだと。

そんな考えごとをしながらも集中が過ぎると体が機械のようになってしまい色のないトランスの世界へ誘われます。ダンサーインザダークのセルマの気分ですね。

規則正しい生活とカロリー計算された食事で体脂肪率は落ちてるんだけど体力も落ちてしまってる気がします。

ここから出たくないとは思わないけど出所後の期待と不安は均衡しています。「甘いもの食うぞー」って目論みつつ「果たしてそのお金はどうすれば」って。「ビール飲みて〜」って夢見ながら「オレの肝臓はアルコールに耐えうるのだろうか」って。今のボクは期待と不安で成り立ってます。

まあ出たとこ勝負かな。こんな経験これまでの人生になかったのでどんな風に自分が現実と対峙するのか楽しみっちゃー楽しみではあるんだけど。

一昨日から部屋のスチームが稼働しはじめました。おかげで水滴がガラス窓にびっしりついてスカッと晴れた景色もびしょ濡れです。かと言って換気しようとは思えません。花より暖房。いよいよ冬がはじまります。ラジオからはベッドミドラーが流れててメランコリックな雰囲気を演出してくれてます。実にオレに似合わない。

年末年始は手紙が出せません。次は2月かな。不義理を先にお詫びします。すみません。Rちゃんはどんな年末ですか。ゆっくりできたらいいですね。体に気をつけて。仕事も頑張って。いかりやさんみたいになってる(笑)。よい年末をお過ごしください。

Enjoy the holidays!

 

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これと「風が吹くとき」は胸糞悪いんだけど定期的に見てしまう。