ある依存症者の終わらせたい日記

人生の大事なことは覚せい剤が全部教えてくれた。HIV×ゲイ×依存症×前科⇒精神保健福祉士のライセンス失効⇒最近復権。君子豹変して絶対に幸せになる。

MTさんへの手紙 その1

元気ですか。手紙をどうもありがとう。
この一年で手紙を書くのにも随分上手くなったつもりだったけど、何を綴ればいいのかわからず書きあぐねています。
まずは心配、そしえて迷惑をかけてしまってすみませんでした。いったいどれとどれとどれについて謝っているのかといわれそうですが、もう全部ごめんなさい。
さすがにどの面下げてという恥の意識があり、再保釈後は連絡できずにいました。収監前に一度だけメールしたかな。「残念に思いました」という文字の入った返信をよんであーっこりゃ本格的に傷つけてしまったなあと返す言葉が見つかりませんでした。
いただいた手紙に「自分たちが支えてあげることができなかった」と書かれてありましたが、それは違います。僕の方にSOSを出す力、サポートにこたえる力とも言い換えられますが、それがなかっただけの話です。裏切ってしまい悲しませて申し訳ありませんでした。
みんな元気にしていますか。未だ後始末は続いてるのかもしれませんね。うらまれてるかなあ。忘れたかなあ。どっちもやだなあ。けど仕方ない。たまにみんなの夢をみます。MTさんも出てきました。なぜか僕と結婚していて実家で僕と母親がもめているのを仲裁していました。絵を描いていてよくモデルをみたらKTだったってことも。昨日は上半身だけのJJさんが何人も登場して曼荼羅のように回り続けていました。
覚せい剤はそんなに悪いことだとは今も思っていませんが、だけど結果みんなのことを暴力的に傷つけてしまいました。その罪と罰で今ここにいるんだと思っています。暴力的に生きてきたつけです。
施設長という高い職位、そこから生じる余裕ぶったムード、発言の抑制のなさ、新しい物好きなミーハーさ、努力をきらうあきらめの早さ、口のうまさ、やけにはしょった物言い、ついて来れる奴だけついてくればいいという傲慢さ。そんなあらゆることがこうなってしまう種だでした。問題に気づきながら解決を先延ばしにした結果です。なるべくしてなったんだと思っています。MTさんの退職を思いとどまらせようと四苦八苦したあのやりとりも今思えば強引すぎるやりかただったなあと。
やさしくなりたいなあ。やさしくなりたいと思っています。手あかのついた言葉ですが、本当にそう思うんです。他の人も自分も猫も家族も自然も、そういうものも大事にできる力が欲しいです。
蝉の声が消えました。そういう地味な刺激を探して過ごしています。ビルの明かりが消えるのをみて、今日は残業してないんだなあと思ったり、洗濯から戻ってきたタオルの洗剤の匂いに癒されたり、ひなびた毎日です。手紙に書かれてあった「平凡な生活は幸せです」という言葉がしみます。
ここのメンツはつわもの揃いです。精神科経験から変わり者への耐性は強いほうだと自負していましたが世界は広いことを思い知らされます。ジャンプの挌闘マンガのように次から次へと強者の変人が登場してきます。売るほどいますよ(笑)。だれも買わないだろうけど。平日三十分の運動でしか他人とのふれあいがない単独室同士なので唯一のコミュニケーションのこの時間にアクが強くでてしまうのかもしれませんが、それにしてもといった具合です。まあ何よりも一番の刺激は手紙と差し入れ本です。(親切心をくすぐったらどうもです。
本の差し入れは一回三冊まで)。
シンプルにあやまるだけの手紙にしたかったんですがここまできてしまいました。謝る側が楽になる謝罪ならするべきではないと思っています。だからこの手紙を書いて、謝ったからといって許されたとは思っていません。いつまでも謝罪は続くんだという覚悟はもっているつもりです。だけど今回、一度目の「ごめんなさい」を伝える機会を与えてくれてありがとう。ありがとうございます。感謝しています。
手紙とてもうれしかったです。本当にありがとう。またね。でいいのかな?

 

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