ある依存症者の終わらせたい日記

人生の大事なことは覚せい剤が全部教えてくれた。HIV×ゲイ×依存症×前科⇒精神保健福祉士のライセンス失効⇒最近復権。君子豹変して絶対に幸せになる。

親への手紙 その1

お元気ですか。
今はまだ拘置所の病室です。
ここから言葉としては似つかわしくないものになりますが、元気にやってます。
手紙と差し入れの本ありがとうございました。
返信がおそくなってしまい申し訳ありません。
拘置所からは手紙の送信が一週間に一回という制限があります。
関係者の方への手紙も今書いているところです。

 

入所時は未決拘留あつかいでしたが、今は懲役受刑者となりました。
平成三一年五月が刑期満了日です。
中学時代以来の丸刈りになった以外、こちらでの一日に大きな変化はありません。
逆に病室での安静第一な毎日はほとんど刺激がありません。
何もしなくていい場所でなく、何かをしてはいけない場所という感じです。
そんな中での手紙はとてもうれしいです。
ただ刺激がない分、言葉がダイレクトに響くので読んだ後のダメージがとても大きくなります。
ここからはグチグチした内容になるので読み流してください。

 

今の自分にはクスリをやめること,HIVに向き合うことだけで精いっぱいです。
「嘘をつくな」「誠意ある人間になれ」「生んでよかったと思わせてほしい」と訴えられても、もちろんそうしたい気持ちはやまやまだけど、大きすぎてどうしていいのかわかりません。
口に出せと言われて思ったことを言えば、言いたい放題だと咎められ、素直に生きろと言われて好きなようにやるとやりたい放題だと責められる。じっくり考えて書いた手紙も感謝、謝罪、反省が全く感じられないとバッサリ切られてしまう。八方ふさがりです。
会話と違って手紙の文字は形に残ってしまいます。うれしい手紙なんですが読み返すのにエネルギーがいります。

 

僕は一人が好きなわけではありません。一人の時間が欲しかっただけです。家にいても犯罪歴のある息子という目で、保護でなく監視されているように感じました。だから帰る気がしませんでした。
期待はずれだったでしょうが、自分なりに二人にとって理想の子供になるために頑張ってきたつもりです。だから今更「ありのまま」「さらして」と言われてもそもそもありのままの自分というのがわかりません。
親子だからと言って別の人間です。理解できないこと、共感しがたいことはあって当然だから何もかもわかってほしいとは思っていません。支えてほしい、励ましてほしい、慰めてほしいとかでもなく、僕が望むことはただ受け入れてほしいんだと思います。
「甘えろ」と手紙にあったので、思うままに書き連ねましたが、「甘え」なのか「勝手」なのかよくわからないものになりました。
前の手紙と言ってることが違うように感じるかもしれませんが、どちらも本心です。
ここでは考える時間は十分に与えられています。受け入れてもらうために何をすべきかじっくり考えたいです。
今回の事件は僕がやったことで、責任は僕だけにあります。もうこれ以上悲しまないでほしいというのが、今の僕の勝手な甘えになります。


報告が二つあります。
まずは一つ目。HIVのためこちらで受けた血液検査の結果が出ました。赤い矢印の数値(CD4)が免疫機能の目安になります。数値が高いほうがいい状態と思ってください。今回116と低下していたためツルバダとテビケイを服用しはじめました。いよいよHIVとの永いつきあいの幕開けです。特に副作用もなくおだやかな滑り出しです。今は朝食後時間通りに投薬されるので問題ないんですが、服薬リズムが崩れることで耐性ウイルスが発生するリスクがあります。出所後の習慣づけが課題です。


報告二つ目。分類面接をうけました。時期は未定ですが、都内の八王子医療刑務所になるであろうとの説明でした。そこである程度状態が安定すれば一般刑務所に移送されるそうです。あさひ島根はどうかと聞いてみたところ、「病気持ちはまずない」と言われました。そういうつもりで切りだしたつもりではなかったんですが、分類面接官から「そこに行けば薬をやめられるというような甘い幻想はもたないほうがいい」と諭されてしまい、ということでしばらくは都内です。

つい先月のことのはずなのに山積みの問題をどうやりくりしたのか記憶がおぼろげではっきり思い出せません。健康保険、税金、年金などちゃんと処理しきれてたのか不安です。スマホの解約、ネットバンキングは大丈夫だったんでしょうか。家具の処理、引っ越しについても大変だったかと思います。免許証の件も最後は丸投げでまかせっきりにしてしまいました。
伝わらないかもしれませんが、本当に感謝しています。ありがとうございます。
また来月どこに落ち着くかわかりませんが手紙を出します。
寒暖の差があまりない病室でも秋を感じます。外は寒くなってきているはずなので二人とも体に気を付けてください。


追伸 来月誕生日ですね。健康な七十代をお過ごしください。

 

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祈るように謝って

謝るように感謝する

そんな手紙