ある依存症者の終わらせたい日記

人生の大事なことは覚せい剤が全部教えてくれた。HIV×ゲイ×依存症×前科⇒精神保健福祉士のライセンス失効⇒最近復権。君子豹変して絶対に幸せになる。

親への手紙 その13

拝啓 うすい青空が広がっています。梅雨前線の気配はありません。こちらでは夏を迎えるにあたり、半袖シャツ、短パンへと衣替えも終え、扇風機も廊下で終日まわりはじめました。肌寒く感じるときもありましたが、すぐに季節も夏仕様に追いついて、今ちょいどいい心地です。お元気ですか。いつも手紙と差し入れ本をありがとうございます。

別府に湯治にいかれたんですね。温泉なんて贅沢は言いませんが、大きな湯船に足を延ばしてのんびりってのにはあこがれます。ここでは毎日麦飯なので体臭が独特なものになってしまっているらしいです。ちょっとまゆつばではありますが、染み付いた匂いってのはない話じゃなさそうです。サウナなんかで汗とともに流しきりたいなあと思っています。
ここに来ての生活もろもろについては特に不満もありません。慣れたのかもしれませんが、食事も出されたもので十分満腹ですし、夜も布団に入って三十分で寝付くことができます。しいて不満をいうなら人づきあいが…。あれはまずい、これは嫌だといつもグチグチいう人と話を合わせるのはちょっと面倒ですね。

松本先生の本のちらしもありがとうございます。あの本(というかテキスト)は保釈中に全部読んでしまいました。というか一応自分の専門分野でもあるし、知識としてはわかっているものばかりなんで、今のところは大丈夫です。ここであのテキストをひとりきり読み進めるのは、ひとりでしりとりをするようなわびしさがあります。きっとグループなんかでやいややいやいいあいながら深めていくべきものなんだと思います。

体調についても変わりありません。5月30日に採決されましたが、結果はまだ教えてもらっていません。診察もこちらに来て一度だけ、もしかしたら新薬に処方が変わるかもしれないと説明をうけたそれきりです。来月の手紙では経過報告できるはずです。
すこし前に免疫について書かれてある本を読んでいました。その中にはエイズについてもふれられていて、そこには「この病気がややこしいところは、そもそも病気をくいとめる仕組みであるところの免疫系そのものにウイルスが入り込んでしまうことにある」と説明されてありました。細菌が体に侵入してきたときに体が免疫反応をおこそうとすればするほど、HIVウイルスがどんどん増殖してしまいます。HIVは相手の攻撃のための力を自分側のものにしてしまい、そうしてみるみるHIVウイルスを増やしていき、細胞を破壊して感染部位を広げていく。結果、感染者は抗体をつくることができず、免疫反応を起こすことができなくなり、何らかのAIDSを発症してしまうという…。幸いなことに僕はまだ発症まではしていないんですが、知れば知るほど手ごわい病気です。
ちなみに発疹については薬の副作用ではないようです。おちていた免疫が上昇してくるとそれまで素通りしていた問題のない細菌に対して免疫系が過剰に反応をおこすことがあり、そういった時に出やすいとのことで、回復のサインともいえると説明をうけました。
これまでは精神の分野一辺倒だったんですが、これからは身体の方にも精通すべく自分の体を使ってゼロから学んでいます。

ちょうど今、看護師が来て血液検査の結果を教えてくれました。
CD4は231。前回より10アップ。標準値(441~2156)にも、一般工場へ行く目安の350にもまだまで及びません。大体3年くらいかけて300代まで上昇していくらしいです。焦らず見守りたいです。
白血球はチェックし忘れました。肝機能はほぼ正常値です。体調はについてはこんな感じです。次回の検査は9月。

さて国保の減免の手続きもありがとうございます。手紙にわざわざ「あなたの後始末」と書き加えられていましたが、このフレーズも4回目です。もう勘弁してください。正直なところ、だったらもうしてくれなくてかまわないと言いたいところですが、そうもいかず後もう一年来年もお願いすることになるんですが、すみません。(頼みついでにもう一つ。郵便物の転送の更新手続きももう一年経つのでお願いします。)

何か目新しいことを書こうとしても、さして変化のある毎日でもなく…。そういえば部屋替えがありました。半年ごと(6月と12月)に一部屋ずつ隣に移っていくんです。今はまた一番端の部屋です。景色は…、変わったといわれなければ、気づかない程度の変化です。

届いた手紙を読むたびに色々と心配させてるなあと感じています。「気持ちが伝わらなくてもどかしい」と書かれてありましたが、自分なりに受け止めているつもりです。そして考えてもいます。それだけはわかってもらいたいなあと。クスリの再使用や再犯は論外ですが、もしかしたらこれからの将来、どこかの場面で二人の期待通りに僕は動かないかもしれません。だけどそうなったとしても気持ちが届かなかったと思わないでください。思いが伝わることと僕の言動が二人の望むものであることは分けて欲しいんです。こういう風に書くとやっぱり自分のことだけを考えている、反省が足りてないと思われそうですが、ありがたい気持ち、申し訳ない気持ち、そしてやってもらったことに報いたい気持ちはずっと持ってるんで。

夕食の配膳がはじまったようです。音が遠くから聞こえます。ここは端なので一番最後。まだしばらく余裕があります。17時前でまだまだ外も明るいままです。
来週は木曜まで雨予報。丸一週間こもり生活になりそうですが、気持ちだけは窓の外に向けておきたいものです。お二人ともグーグーと穏やかな梅雨をお過ごしください。    敬具

 

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