ある依存症者の終わらせたい日記

人生の大事なことは覚せい剤が全部教えてくれた。HIV×ゲイ×依存症×前科⇒精神保健福祉士のライセンス失効⇒最近復権。君子豹変して絶対に幸せになる。

ITさんへの手紙 その11

冷たく涼しい風が冷たく寒い風にかわりつつあります。外では息も絶え絶え最後の蝉がむせび鳴いています。いやーセンチメンタルですね。
お元気ですか。手紙に差し入れ本にいつもありがとうございます。
穗村弘。おもしろい。面白くて自分でも「にょにょっ記」私本注文しちゃいました。注文した後に「にょっ記」の存在を知り勇み足に気づきました。今は一日一タイトル、天声人語のように読み進めています。
「魚は痛みを感じるか」。こちらは一日一章づつ。まだ魚の痛みにまでたどりついていません。
読書の秋。またお願いしたい本があって…「アヘン王国潜入記」と「怪のはなし」、もう一冊はなにかITさんのおすすめを。いつもすみません…。
去年の9月12日に東京拘置所に入り、収監生活ももう一年が過ぎました。収監当初は作業もなく持ち込んだ仕事関係の本にただただ没頭していました。現実をみたくなかったんでしょう仕事に逃避する癖がここでも続いていました。一年も経つと変わるもんで今はその手の専門書に全く手が伸びません。せっかくこんなに時間があるのに...。今度は出所後の現実を直視するのを無意識に怖がって避けてんのかなあ。そうじゃないよなあ。楽しみとまでは言えないにしろ、仕事したい気持ちはずっとあるし…。まあ一年経って冷静にはなれているとは思います。今朝の新聞に「精神科医療における身体拘束」に関する記事が出ていましたが、少し俯瞰して眺めています。この記事の内容自体についてもですが、以前の自分がこの記事を見つけたらどんな風にとらえていただろうかと。前のめりになって新聞を広げて読んでいたであろう自分の姿を少し離れたところから見ることができるようになりました。
なんで前はあんなに権利擁護(活動)に執着していたんだろう。執着は意志と読み替えることもできるので一概に悪いものと言い切れませんが、かたくなだったなあ。今はあのかたくなさもかわいく思えるようになっています。無事社会復帰できたとして、しっかり働けるのも二十年程度です。仕事の範囲、ペース配分の見極めはしっかりつけたいものです。
HIVの薬がかわりました。二錠のうち一錠が新薬に。前の薬は長く服用し続けると骨と腎臓によくないらしく(そんなインフォームドコンセントなかった!)、新薬はその点が改善されているとの説明でした。
どんな薬でも長くのみ続ければ何らかのダメージを体に与えるものなので、今度の新薬だって副作用がゼロってはずはないでしょう。まあ副作用があったところで飲まないとう選択肢はないんですが。
きっとネットがあれば新薬について(それも悪い情報を中心に)どこまでも調べつくすでしょう。華岡青洲ではありませんが、薬の作用(副作用)について自分の体に尋ねるしかない今の境遇は悪くないと思います。
地球上に人間にとって脅威を与える未知なる伝染病が出現するとそれを科学(医学)の力で壊滅させるのにはいつもだいたい百年くらいかかるらしいです。(天然痘、ペスト、エボラとかもそうだった)。HIVが人間界に登場したのは1960年代後半といわれているので後四十年くらいすれば完治する治療薬がみつかるのではないでしょうか。ぜひ見届けたい。
便箋がつきてしまうので今回はここらでさらばとさせていただきます。夏の虫たちは消えてしまいましたが、虫刺されの痕は赤くはれたままかゆみ続けています。元の肌にもどったころには完ぺきな秋空になっているんでしょう。よい秋をお過ごしください。

追伸 PEA、DMAT、DPAT...知らない単語ばかり。またレクチャーしてください。

 

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