ある依存症者の終わらせたい日記

人生の大事なことは覚せい剤が全部教えてくれた。HIV×ゲイ×依存症×前科⇒精神保健福祉士のライセンス失効⇒最近復権。君子豹変して絶対に幸せになる。

フィールドアイデンティティ

引っ越しの多い人生を送ってきました。

自分には地に足をつけた生活というものが、見当つかないのです。自分は九州の商人の家に生まれましたので幼少時から進学のために家を出るまで一度も引っ越しをしたことはありませんでした。転勤の多い親の影響でこうなってしまったというような育ちの問題ではないはずです。

普段の落ち着きのなさが生き方にまで反映されているんでしょう。いや元来の落ち着かない生き様が細部の立ち振るにまで醸し出てしまっているのかもしれません。まあどちらでもいいのではありますけれど。

十八で実家を出てから今の部屋がもう十八件目になります。

三万円の激安物件もありました。海辺の島の部屋もありました。3LDKにひとり(と猫一匹)だったこともありました。施設、独房、病室…いろんな場所で過ごしてきました。どの部屋も一長一短、いい思い出も悪い思い出もあります。ずっとひとりだったということが共通点です。

今の部屋は大きな窓がふたつあって、五角形の形をしたなかなか面白い間取りです。身の丈にあったちょうどいい広さです。山手通りに面していて騒音に包まれています。窓を開けると車の爆音に身体が舞い上がりそうになります。東京に住んでいることを実感できます。『サイレン 爆音 現実界 或る浮遊』と叫んだのは誰でしたっけ?

毎朝大きな窓から差し込む太陽の光に目覚めます。お天道さまに顔向けできない暮らしが長かったせいで、太陽がほんとうにあたたかくありがたい。暗闇に慣れるよりもいつまでも光に焦がれる性質(たち)に生んでくれた母親に手合わせる毎日です。

先日テレビを売りました。テレビを手放すと模様替えの選択肢も増えます。部屋の居心地もぐんと良くなります。ここのところツイッターにのせる画像は部屋の写真ばかりなのがその証拠でしょう。みんながテレビを捨ててしまえば世界平和も叶うような気がします。テレビを捨てよ、部屋にいよう。

今の部屋でただひとつ不満があるとしたら、それは…むかいに交番があることです。パトカーのサイレンが頻回なんです。その度に脳裏に逮捕されたあの日の記憶がちらつきます。サイレンと赤いライトは誰かのSOS。あの日自分を乗せたパトカーはいったい誰を救ったんだろう。そんな不毛にふらふら迷い込んでしまうんです。南無三。

ああ、自分の居場所はどこにあるんでしょう。ここじゃダメなんでしょうか。ここでいいんでしょうか。ひとりで生きていると居心地の悪さばかりに敏感になってよくありません。けど本当はわかっているんです。嫌なのはむかいの交番でなく、満足できない自分なんだということを。いつまでもひとりきりな自分をもてあましながらもこの独り身を捨てきれないでいる自分自身なんだということを。

まあそれもいいのかもしれません。時が来るのを待つのみです。梅雨が開ければ夏が来るのは自然の摂理ですし。

 

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