ある依存症者の終わらせたい日記

人生の大事なことは覚せい剤が全部教えてくれた。HIV×ゲイ×依存症×前科⇒精神保健福祉士のライセンス失効⇒最近復権。君子豹変して絶対に幸せになる。

ある勇敢なアディクトの話

深夜0時も過ぎた頃、友人から炭良ホルモンに行こうか逡巡しているというLINEが入る。今からだそうだ。先日のこのブログの記事を読んで食べたくなったらしい。ばあちゃんとのいい話だったのに...そこ?LINEのやり取りが終わった刹那、無性に肉が恋しくなる。彼の肉欲を引き継いでしまったらしい。そういえばしばらく肉食ってないなあ。無職に肉は贅沢だ。仕事をやめてからというもの財布からお金を出すたびに胸がちくりと痛む。レシートを取っておいて家計簿アプリに入力する習慣もなくなった。これ以上切りつめるところなんかないんだから。こういう生活を続けているとどんどん荒んでいくのかと思っていたがそうでもない。心から欲しいのか?今必要なものなのか?と、いちいち自分に尋ねるプロセスがわりかし楽しい。そうやって買ったものっていいものばかりになる。何かのために貯金をするのは苦手だが(クスリを除く。クスリのためにお金を貯めるのは結構好き。)、いかに出金を抑えるかというポイントに意識(こだわり)がうつってしまえばしめたものである。ギリギリで生きていくのも悪くない。

ここのところ週末は家から一歩も出ない。ウイルスのせいでなく金策ゆえの自粛である。生活を自粛させられているでなく、自粛活動をやってみようって感じ。ボクはお気楽ににできている。

ひとつお気楽ではすまされないことがある。ミーティングの会場問題だ。NAミーティングが会場都合(コロナ都合)で、軒並み中止となっている。たまに行われているところがあるとミーディング難民であふれかえる。ネットフリックスのネイチャー系の番組で、氷が溶けて行き場を失った海獣たちが陸にひしめき合っているをみたが、ああいう感じ。ミーティング会場でしか息ができないアディクトは少なくない。

感染症も大変でしょうが、依存症もけっこう死ぬんです。AA(アルコホーリックスアノニマス)なんか一回のスリップが命とりになりかねない。ついこの間まで元気だった人の死を次のミーティングで知らされるなんてよくある話だ。

依存症者の集まりは社会とはいえないけれど、依存症者の集まりの中からは社会のほんとのところがよく見える。このところ日本がとても弱っている。日本にいると日本の正しい情報が手に入らない。震災の時と同じだ。だけど感じることはできる。鳴かぬなら殺してしまえホトトギス。アディクトさえも守れない弱ってしまった日本。

「ないんだったら自分たちでつくればいい」。ひとりの秀吉的アディクトが週末カラオケボックスでミーティングをしようと声をあげた。

土曜はひとりきりだったそうだ。それでもやりきったとのこと。家康気質のボクは日曜から便乗することに。久々の週末外出だ。スタートは二人だった。一人きりのわかちあいもたいがいだが、マンツーマンもなかなかシュールだ。(激混みの歌広のひと部屋、モニターの電源もおとし、ぶつぶつ語る成人男性二人)。ききっぱなしにならず、つい相手の話に「それはね…」とか「オレだったらね…」とか、反応してしまいそうになる。途中からもう一人加わった。一人が二人に、二人が三人…わかりやすくていい。三人いればもう立派なミーティング。濃厚接触ミーティング。セックスでも3Pのときにその人の本性が出てしまうものだし(ノーエビデンス)。自立は集団の中でしかなしえない。そして孤独を伴う。そんなことを思った。

なかなかいいミーティングだったのではないだろうか。わかちあいの後グループ名を三人で練る。形から入るのが好きなタイプなんです。(そして形にならないまま終わるのが理想)。「ハブアナイスフライトグループ」「///(スリースラッシュ)グループ」「フライトアテンダントグループ」…。退室のコールであえなく終了。本日発足、本日解散。名もなき僕ら。「今日だけ」をみごとに体現したアノニマスグループ。いいんじゃないか。

外へ出ると代々木の空は、墨汁を垂らしたみたいなモノクロの夕暮れ。早咲きの桜が先手先手でもう散っていた。夕べの肉欲もドリンクバーの飲みすぎで何処かに行ってしまったらしい。

初めての3人のミーティング。はじめてのカラオケボックスミーティング。カラオケボックスにきて歌わなかったのも初めてかも。人生はまだまだ知らないことだらけだ。今日は声かけてくれてありがとうね。名前はかけないけど感謝してます。また会おう。今日だけはいつまでも続く。

 

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先手先手